時代は、大きく動こうとしていた。
長く続いた江戸幕府の力は弱まり、
新しい時代を目指す勢力が、確実に勢いを増していた。
その中心にいたのは、
薩長同盟を軸とする勢力だった。
薩摩藩と長州藩。
かつては幕府に従っていたこの二つの大きな藩が、
やがて手を組み、幕府を倒す側へと回る。
彼らが目指していたのは、単なる権力争いではない。
天皇を中心とした新しい政治体制。
そして、西洋の技術や戦い方を取り入れた、
これまでとは違う国の形だった。
実際、彼らの軍は変わり始めていた。
銃や大砲を中心とした戦い方。
統制された動き。
それは、従来の「刀を主とした戦」とは別のものだった。
その流れの中で、
幕府に仕える剣の集団――新選組は、そこにいた。
京の治安を守り、
敵対する志士たちを取り締まる。
彼らは「幕府の象徴」として、
確かにその場に立っていた。
だが、その足場は、すでに揺らいでいた。
そして――
その現実を突きつけられる戦いが始まる。
鳥羽・伏見の戦い。
新選組にとって、
すべてが崩れ始めた戦いだった。
それは、突然終わったわけではなかった。
少しずつ、確実に。
気づいたときには、もう戻れないところまで来ていた。
それまで彼らは、
「幕府の剣」として戦ってきた。
京の治安を守り、
敵を斬り、
時代の中心にいたはずだった。
だが、その構図は変わっていた。
相手は、ただの反乱勢力ではない。
新しい時代を背負った軍だった。
装備も、戦い方も、違う。
何より――
“流れ”が違っていた。
銃声が響く。
これまでの戦いとは、明らかに違う音だった。
刀で届く距離に入る前に、
人が倒れていく。
それでも前に出る。
それが、新選組だった。
だが、前に出るほど、
現実がはっきりしていく。
勝てない。
その事実を、誰も口には出さなかったが、
感じてはいたはずだ。
それでも、引かなかった。
なぜか。
理由は単純だった。
ここで引けば、
自分たちのすべてが終わるからだ。
信じてきたもの。
守ってきたもの。
それらが、一瞬で否定される。
だから、戦うしかなかった。
戦局は、あっけなく決まる。
敗走。
それは、ただの後退ではなかった。
「時代から外れた」という現実を、
突きつけられる瞬間だった。
この戦いを境に、
新選組は“中心”から外れていく。
京を離れ、
幕府とともに、東へ。
ここから先は、もう上がることはない。
それでも彼らは、剣を捨てなかった。
そしてその中心にいたのが、
土方歳三だった。
負けを理解しながら、
それでも戦い続ける。
その選択が、どこへ向かうのか。
この時点では、まだ誰も知らない。
ただ一つ確かなのは――
すべてが、ここから崩れ始めたということだった。
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