――ああ、信長よ。
今、私はあなたのいるあの本能寺へと向かっている。
忠義の名の下に、私は何度あなたに従い、何度あなたに裏切られたことか。
思えば、あの横暴な笑み、冷たく人を裁く目。
私は幾度も心の中で祈った。
「どうか、私を見捨てないでくれ」と。
しかし今日、祈りは消えた。
私は恐れている。
裏切り者として歴史に名を残す恐怖、そして、成功せぬなら死が待つ恐怖。
だが、恐怖以上に、胸の奥底で渦巻くこの感情――怒り、憎しみ、そして、どうしようもない正義感――が、私を前に押し出す。
――あの扉の向こうで、信長は私を嘲笑うだろうか。
あの鋭い瞳に、私のこれまでの忠義が踏みにじられたことを思い知らされるのだろうか。
くそ……くそ……私の心は何度も震えた。
しかし、私はもう戻れぬ。
この道を進むたび、過去は断ち切られ、未来は私の手に委ねられる。
私の手が震えるのは、恐怖のせいか、それとも……期待か。
歴史よ、聞け。
今日、この瞬間、私は自ら運命を握る。
忠義と裏切り、愛と憎しみ、恐怖と決意――すべてを抱え、私は本能寺へと歩みを進める。
そして、もしこの手が震えを止めぬならば……
その震えも、私の意志の証だ。
信長よ、見届けよ。
歴史が私をどう裁こうとも、胸に燃えるこの炎は、誰にも消せはしない。
――さあ、行こう。
私は、私自身の運命を切り開くのだ。
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