2026年3月16日月曜日

大坂夏の陣に参陣する前の真田幸村の気持ち


夜の空気は静かだった。
しかし、その静けさの奥には、戦の気配が確かにあった。

豊臣の城、大坂城。 そして迫り来るのは、大坂夏の陣。

その戦に参じようとしているのが、 「日本一の兵」と後に呼ばれる武将、真田幸村である。

幸村は静かに空を見上げていた。

「いよいよか……」

この戦の状況は、誰の目にも厳しいものだった。

先の戦、大坂冬の陣**の後、 両陣営が合意した講和条件が実行されたことで、 大坂城の堀や防御施設は埋められてしまった。

かつて堅固だった大坂城は、 もはや「裸城」と言われるほど守りを失っていたのである。

冬の陣のような籠城戦では、 徳川軍に勝つ見込みはほとんどない。

豊臣方に残された道は一つ。
籠城ではなく、野戦で決着をつけることだった。

しかも兵力差は大きい。
徳川軍はおよそ十五万五千。
それに対して豊臣軍は七万八千。

倍近い差があった。

守りの要である大坂城の防御も失った今、 普通に戦えば勝てる戦ではない。

だからこそ、豊臣軍に残された勝利の道はただ一つだった。

徳川軍総大将、 **徳川家康の首を取ること。

それだけが、戦をひっくり返す唯一の可能性だった。

幸村は静かに息を吐く。

「なるほど……面白い。」

無謀と言えば無謀。 だが戦国の世では、それが戦というものだ。

ふと、父である真田昌幸**の顔が思い浮かぶ。

「幸村よ、勝てぬ戦でも勝ち筋を見つけよ。」

もし父が今ここにいたなら、 きっとそう言うだろう。

幸村は小さく笑った。

「ならば、その勝ち筋……この槍で作るまで。」

明日、戦が始まる。

狙うはただ一人。
天下人、徳川家康。

幸村は静かに立ち上がった。

それが、後に「日本一の兵」と語り継がれる男の、
最後の戦いの始まりだった。

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