ただ一つの勝利条件、徳川家康の首――
その結論は、あまりにも明確で、そしてあまりにも無謀だった。
豊臣方に残された道は、もはや一つしかない。
天下人その人を討ち取ること。
そして、その役を引き受けた男がいた。
真田幸村――日本一の兵と呼ばれた男である。
戦場は、すでに混沌としていた。
豊臣方は押し込まれ、各所で崩れ始めている。
しかしその中で、ただ一つだけ異質な動きがあった。
赤備え。
統率された、鋭い刃のような部隊。
真田隊が、静かに、そして確実に前へ進んでいた。
狙いはただ一つ。
徳川家康の本陣。
その距離が縮まるごとに、空気が変わる。
ただの一部隊ではない。
あれは“目的を持った軍”だった。
止まらない。
迷わない。
ただ一直線に、中心へ――。
徳川方の兵たちも、それに気づき始める。
「まさか…本陣を狙っているのか」
ざわめきが広がる。
そして、それは恐怖へと変わっていく。
真田隊、突撃。
その瞬間、戦場の流れが歪んだ。
押されていたはずの豊臣方の中で、
たった一か所だけ、逆流が起きる。
赤い波が、すべてを飲み込みながら前進する。
槍がぶつかり、
叫びが交錯し、
土煙が空を覆う。
その中心で、真田幸村は前を見ていた。
あと少し――。
その距離は、確実に縮まっていた。
徳川家康の本陣。
そこは決して破られるはずのない場所。
幾重にも守られた、安全圏のはずだった。
だが、その常識が崩れ始める。
「近い…!」
家康の周囲にも、動揺が走る。
本陣が、揺れている。
絶対であるはずの場所が、
今まさに“戦場の最前線”へと変わろうとしていた。
この一撃で、すべてが終わるかもしれない。
あるいは、すべてが変わるかもしれない。
ほんのわずか。
あと一歩。
だがその一歩が、
歴史の中で最も遠い距離でもあった。
――そして物語は次へ進む。
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