冬が終わり、空気が少しずつ緩んでいく頃。
しかし、大坂城の中だけは、静かな緊張に包まれていた。
それは、ただの季節の変わり目ではなかった。
運命の戦――大坂夏の陣の前夜だった。
かつて、天下を手にした豊臣家。
その栄光は、いまや遠い記憶のように感じられていた。
冬の陣で築かれた講和。
一見すれば平和は訪れたかのように見えたが、
それは徳川側にとって都合の良い“時間稼ぎ”に過ぎなかった。
外堀は埋められ、内堀も次第に削られていく。
かつて「難攻不落」と呼ばれた大坂城は、
その防御力を確実に失っていた。
そして何より痛かったのは、人の流れだった。
各地から集まった浪人たちは、冬の陣を経て、少しずつ離れていく。
忠義よりも現実を選ぶ者も、決して少なくはなかった。
残された者たちは、覚悟を決めた者たち。
だが、その覚悟が戦況を覆すほどの力になるかといえば、
それはあまりにも厳しい現実だった。
大坂城の中には、若き主君・豊臣秀頼。
そして、その母である淀殿。
彼らはまだ、完全には状況の深刻さを理解していなかったとも言われる。
あるいは、理解していても、受け入れることができなかったのかもしれない。
一方、徳川側は着実に準備を進めていた。
圧倒的な兵力と、長年の戦経験。
勝つべくして勝つ体制が、すでに整っていた。
そんな中、ただ一人。
この絶望的な状況の中で、なお戦う意志を燃やしていた男がいる。
真田幸村――後に「日本一の兵」と称される武将である。
彼は、この不利な戦をどう覆そうとしていたのか。
そして、豊臣方に残されたわずかな可能性とは何だったのか。
静かな夜が、大坂城を包み込む。
だがその静けさは、嵐の前触れに過ぎなかった。
すべては、翌日に始まる。
避けることのできない、最後の戦いが――。
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