2026年3月30日月曜日

新選組最後の戦いシリーズ 回想編 沖田総司が戦えなかった理由

沖田総司

あの頃のことを思い出すと、
どうしても一人、欠けている顔がある。

沖田総司。

新選組の中でも、もっとも軽やかに剣を振るった男。
誰よりも笑い、
誰よりも鋭かった剣士。

だが、
時代が大きく動き出したその瞬間、
彼はそこにいなかった。

発端は、静かな崩れ方だった。

ある日、何気ない日常の中で、
ふとした拍子に血を吐いたとも、
戦の最中に倒れたとも言われている。

原因は――結核。

当時は、不治の病。
そして、剣を握る者にとっては、
あまりにも残酷な宣告だった。

やがて始まる、
鳥羽・伏見の戦い。

新選組にとって、
いや、時代そのものにとっての分岐点。

その戦場に、沖田の姿はなかった。

戦えなかったのか。
それとも、戦わなかったのか。

おそらく、そのどちらでもない。

戦いたくても、
体がそれを許さなかっただけだ。

仲間たちは西へ、北へと向かっていく。

近藤勇は捕らえられ、
土方歳三は最後まで戦い続けた。

その流れの中で、
沖田だけが、別の時間に取り残されていく。

江戸。

戦の音が遠くに響くだけの場所で、
彼は静かに横たわっていた。

かつて、誰よりも速く動いた体は、
もうほとんど動かない。

それでも――
心だけは、戦場にあったのだ。

悔しさに打ちひしがれながらも、
沖田の瞳は未来を見据えていた。

もし、あの病がなければ。
もし、あの時代のうねりの中に、
彼も立っていたなら。

答えは、どこにもない。

ただ一つ確かなのは、
沖田総司の戦いは、
まだ終わっていないということ。

刀を握る日が来るまで、
その心は決して折れない。

静かな部屋の中で、
時代の終わりだけがゆっくりと近づいても、
彼の心は、まだ戦いを夢見ていた。

そう――これが、沖田総司の“最後の戦い”であり、
そして、まだ続く未来への誓いでもあったのだ。

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