2026年4月9日木曜日
新選組最後の戦いシリーズ⑩ なぜ彼は戦い続けたのか 完
あの最後の突撃のあとも、戦いは終わらなかった。
いや、終わることを許さなかったのは、彼自身だったのかもしれない。
土方歳三は、もはや「勝つため」に戦っていたわけではない。
それは、彼自身が一番よく分かっていたはずだ。
時代の流れは止められず、旧幕府の命運も、すでに尽きかけていた。
それでも彼は、刀を手放さなかった。
なぜか。
ひとつには、「新選組」という存在そのものだったのだろう。
京の治安を守るために集まり、
誠の旗を掲げ、数多の血とともに生きてきた日々。
仲間は次々と倒れ、組は形を変え、もはやかつての姿はどこにもない。
それでも彼にとって、新選組は「過去」ではなかった。
最後の一人になろうとも、背負い続ける「現在」だった。
そしてもうひとつ。
それは、彼自身の生き方だったのではないかと思う。
農家の生まれから武士を目指し、自らを律し、剣と規律にすべてを捧げてきた。
妥協も、後退も、彼の辞書にはなかった。
だからこそ――
退く理由があっても、退くことはできなかった。
箱館戦争の地においても、彼はなお前線に立ち続けた。
蝦夷の冷たい風の中で、わずかな兵を率い、
近代兵器を相手に、旧来の意地で抗い続ける。
それは、時代錯誤と呼ばれたかもしれない。
だが同時に、それは「最後まで貫く」という覚悟の形でもあった。
誰かのためというよりも、
「そう生きると決めた自分」を裏切らないために。
戦い続けたのではない。
戦い続けるしか、なかったのだ。
そして――
彼は倒れる。
しかし、その最期は敗北ではなく、
ひとつの生き方が、静かに終わった瞬間だったのかもしれない。
時代は変わる。
人は流される。
だが、流されないまま終わる人生も、確かに存在する。
それを証明するかのように、
彼は最後まで、前を向いていた。
その背中は、きっと誰よりも「武士」だった。
――完
短いですが動画を作りましたので、
よろしければご覧ください
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