勝ち続けた男が、
今度は追われる側になった。
平家を倒し、
名を上げ、
都の人々に英雄と呼ばれた義経。
けれど、その栄光は、
兄・頼朝の目には危うく映っていた。
戦場で勝ち続けたこと。
朝廷から官位を受けたこと。
人々の心が義経へ向いたこと。
そのひとつひとつが、
頼朝との距離を少しずつ広げていった。
義経は、
兄に逆らいたかったわけではなかったのかもしれない。
ただ、認めてほしかった。
ただ、戦ってきた意味を、
わかってほしかった。
しかし、いったん生まれた疑いは消えなかった。
頼朝の命によって、
義経は追われる身となる。
昨日まで英雄として迎えられた都が、
今日はもう安心できる場所ではなくなっていた。
人の目が変わる。
声が遠ざかる。
近くにいたはずの味方が、
少しずつ離れていく。
勝っていた時には集まってきた人々も、
追われる者のそばには残りにくい。
義経は、
自分の強さだけではどうにもならないものがあることを、
この時、思い知らされたのかもしれない。
戦場なら、敵が見えた。
刀を抜けば、進む道もあった。
けれど今、義経を追い詰めているものは、
疑いであり、政治であり、
兄とのすれ違いだった。
それは、どれだけ武に優れていても、
簡単には斬れないものだった。
やがて義経は、京都を離れる。
都に居場所を失い、
味方を失い、
それでもまだ生きる道を探して、
かつて自分を受け入れてくれた奥州へ向かう。
そこは、若き日の義経が過ごした場所だった。
まだ何者でもなかった頃の自分を、
静かに包んでくれた土地だった。
けれど、戻る義経はもう、
あの頃の少年ではない。
平家を滅ぼした英雄であり、
兄に追われる逃亡者だった。
栄光の先に待っていたのは、
拍手ではなく、孤独だった。
義経の物語は、
ここからさらに暗い道へ入っていく。
勝ち続けた男が、
なぜ最後には追われることになったのか。
その答えは、
ただの敗北よりも、
ずっと悲しいものだった。
ここまで読んでくれて、ありがとうございます
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